【 チューリップの原種系 】
原種系 | 説 明 |
アイヒレリ(エイクレリ) eichleri |
1870年にEichler氏によって採種されたことに因む。 原産地はトルキスタン、トランス・コーカサス。 栽培は容易でウィルス病にも強い。2n=24. 園芸品種にエクセルサ(Excelsa、朱赤色)、クラレ・ベネディクト(Claret Benedict、緋赤で外花被片が淡紅色)、マキシマ(Maxima、赤色大輪)、マーカダ(Merkada、深紅色)がある。 |
アクミナータ acuminata |
「acuminata」とは「鋭尖の」という意味。 原産地は不明だが、圃場に栽培しているときに芽条変異によって生じたものと考えられている。(トルコ原産説もある) 球根は長卵形でウィルス病に弱く肥大も悪いが、園芸品種との交雑は容易で、ユリ咲き系はその雑種と考えられる。 |
イリエンシス iliensis |
原産はトルコ東南部、イラク、アゼルバイジャン。 イランの北部や北西部の石の多い丘陵に分布する小型種。 ヴィオラセア(Violacea)グループ |
ウィオラケア violacea |
原産地はイラン北部。 |
ウィルソニアナ wilsoniana |
イギリスの王立園芸協会ウィズリー植物園の元所有者ウィルソン(G.F.Wilson、1822-1902)に因む。 原産地は中央アジア。 本種をmontanaの異名とする見解もある。 |
ヴヴェデンスキー vvedenskyi |
ロシアの植物学者ヴヴェデンスキー(A.I.Vvdensky、1898-1972)に因む。 原産地は中央アジア。小型種。 |
ウルミエンシス urumiensis |
原産地はイラン北西部とトルコ東部。自生状態は明らかになっておらず栽培品だけが知られている。 栽培が容易ですぐ帰化する。 |
ウンデュラティホリア? undulatifolia |
原産地はバルカン半島、トルコ、ギリシャ、イラン、中央アジア。 |
エヅーリス edulis |
エヅーリスは「食べられる」の意味。 原産地は日本の本州、四国、九州の原野に生じる多年草。鱗茎は食用になる。 花期は4月。 |
オーシェリアナ aucheriana |
フランスの探検家オーシェ-エロア(P.M.R.Aucher-Eloy、1792-1838)に因む。 原産地はイラン西部、又はイラン及びシリア 極小種 |
オルフファニデア orphanidea |
アテネの植物学者オルファニデス(T.G.Orphanides、1817-1886)に因む。 原産地は中央アジア、トルコ。 ウィッタリ(Whittallii)グループ。 |
カウフマニアナ kaufmanniana |
原産は中央アジアのトルキスタン。 kaufmann氏に因む。Regelが1876年にトルキスタンで採集した。P.L.Grabber氏がオランダに送った。 容易に結実し、播種によって多くの品種を生じている。開花は非常に早い。2n=24. |
クルシアナ clusiana |
オランダの植物学者クルシウス(C.Clusius、1526-1609)に因む。 原産地は、ポルトガルから地中海を経て、ギリシア、イラン、イラク、アフガニスタンに及ぶ。 1606年クルシウスによってトルコのコンスタンチノーブルからもたらされ、17世紀初めに既にヨーロッパで栽培され、「貴婦人のチューリップ」の名で親しまれていた。 種子はできず、地下の匐枝の先に球根を作る。繁殖は容易。 染色体数は2n=24,36,48,60、花粉は正常だが不稔性。異質倍数体。 園芸品種にクルシアナ・クリサンタ、クルシアナ・ステラタがある。 芳香がある。 |
グレイギー greigii |
Greig氏に因む。 原産地はトルキスタン、中央アジア。 チューベルゲン社のP.L.Grabber氏がトルキスタンで集め1907年にオランダに送った。2n=24 |
ゲスネリアーナ gesneriana |
Gesner氏に因む。 トルコから欧州に入ったものだが、自生地は不明。 パーロット咲きのチューリップは、本種の変種としてT.gesneriana L.var.dracontia Bakaerの学名がつけられている。 |
コルパコフスキアナ kolpakowskiana |
原産地はトルケスタン。 19世紀ロシアのトゥルケスタン統治者コルパコフスキー(G.A.Kolpakowsky、?-1890)に因む。 |
サクサティリス saxatilis |
原産地はクレタ島、トルコ西部。石の多い原野に自生する。 芳香がある。 ライラックワンダーなどがある。 |
シュプレンゲリ sprengeri |
ドイツの園芸家シュプレンガー(C.L.Sprenger、1846-1917)に因む。 原産地アルメニア、トルコ 花期は晩生。1891年に紹介された。 |
シュレンキー schrenkii |
ロシアの植物学者シュレンク(A.G.von Schrenk、1816-1917)に因む。 原産地はクリミア、トランスコーカサス |
シルウェストリス sylvestris |
シルウェストリスは「森林性」の意味。 原産地は欧州。ヨーロッパ、イラン、北アフリカに帰化した。 黄色、丈高種。 |
スアウェオレンス suaveolens |
スアウェーオレンスは「芳香性がある」という意味。 原産地は南ロシアからイラク。ただし園芸種が自生化したものと考えられる。2n=24。 芳香がある。1603年に紹介された。 |
セルシアナ celsiana |
人名に因む。 スペインからモロッコのアトラス山脈まで分布する。 |
ソスノフスキー sosnowskyi |
人名に因む。 コーカサス原産 |
タルダ tarda |
タルダは「ゆっくり生長する」という意味。 タシュケントの植物園のM.A.T.Vvedenskyがトルキスタンの東部に自生していることを明らかにし、それがロシアのレニングラードに移され、そこから欧州に伝わった。 原産地は東部トルキスタン。 小型種。ロックガーデンや鉢植えに良い。球根は匍匐枝で広がる。よく結実し播種後3年で開花するので種子増殖もできる。 2n=24。 芳香がある。 |
チュベルゲニアナ tubergeniana |
チュベルゲニアナはオランダの種苗会社名に因む。 原産地は中央アジアのプラハ。 エミール(Emir)、カンディダタ(Candidata)、ケーケンホフ(Keukenhof)、オリエンタル・クィーン(Oriental Queen)などがある。 本種は育種素材として重要で、ガーデンチューリップとの交雑種が良くでき、その雑種は花色や花形の変化に富んだものが多い。 2n=24。 |
トゥルケスタニカ turkestanica |
トゥルケスタニカは「トルキスタン産の」という意味。 原産地はトルキスタンに自生する。 Fedtschenko、Regelなどが最初に採集。ソ連北部の戸外でもよく開花するくらい耐寒性は強い。 2n=48 |
ハゲリ Hageri |
人名に因む。 原産地は地中海東部沿岸地域。ギリシャ、小アジア。 丈夫で栽培しやすい。2n=24 |
バタリニー batalinii |
ロシアの植物学者バタリン(A.F.Batalin、1847-1896)に因む。 原産は中央アジアのプラハ 園芸品種としては、アプリコット・ジュエル、ブライト・ジェム、ブロンズ・チャーム、イエロー・ジュエルがある。 |
ビフロラ biflira |
原産はクリミア、ユーゴスラビア南部、コーカサスからイラン北部、アフガニスタンまで分布する。 |
フォステリアナ fosteriana |
イギリスの医師フォスター(Michael Foster、1836-1907)に因む。 原産地はプラハ、ウズベキスタン東部。 1904年にトルキスタンからオランダのTubergen社に送られ、戦後に広まった。 本種は少数の子球を生じ開花球となるまで2~3年を要するが、花色が美しく、ウィルス抵抗性があるため多くの園芸品種を生んだ。2n=24。 |
フミリス humilis |
原産はトルコ東南部、イラクアゼルバイジャン、イランの北部や北西部。石の多い丘陵に分布する小型種。 園芸種にヴィオラセアグループ。 |
プラエコクス praecox |
1894年フランスのサボア地方で発見された。栽培種が野生化したものと考えられる。 園芸種とは容易に交雑し、花色は雑種に遺伝する。育種素材として面白い。 |
プラエスタンス praestans |
プラエスタンスは「秀でた」という意味。オランダのチューベルゲン(Tubergen)社がサマルカンド、プラハのホテル経営者J.Haberhauerを使って1901年にトルキスタンで採集したもの。 原産地は中央アジア、プラハ、トゥルケスタン。 栽培は容易で花壇や鉢植えに適する。早咲き種。 フシリア(Fusilier、赤橙色)、イスパハン(Ispahan、黄色)、レーゲルス・バラエティ(Regel'sVariety、緋紅色)、バン・チューベルゲンス・バラエティ(van Tubergen's Variety、橙赤色)、ザーネンブルグ・バラエティー(Zwanenburg Variety、朱赤色)が作出されている。 ・フュージリア:ゴブレット形の鮮やかな赤色の花が茎ごとに1~5個つく。 ・ウニクム:オレンジレッドの花が茎ごとに4個以下でつく。葉に特徴的なクリーム色の縁取りがある。 ・イスパハン(Ispahan)、ツワネンブルク(Zwanenburg)、チュベルゲンス(Tubergens)、フシリエ(Fusilier)、リーガルス(Regals)などの園芸品種がある。 |
プリムリナ purimulina |
原産地はアルジェリア北西部。極めて希少種で入手困難。 |
プルケラ pulchella |
プルケラは「美しい」という意味。 原産地はトルコのジリジア地方。1836年Kotschyによってシレジアの1000m~2600mの高地で採集された。 矮星種。野生でも変異が多い。アルバ・ケルレア・オキュラータ(Albacaerulea oculata、白色、基部は青色)、フミリス(humilis、濃桃色、基部は黄色)、ロゼア(Rosea、菫色、基部は黄色)、ビオラケア・ブラック・ベース(Violacea Black Base、深紅色、基部は黒色)、ビオラケア・イエロー・ベース(Violacea Yellow Base、深紅色、基部は黄色)、イースタン・スター(Eastern Star)、マゼンタ(Mazenta)などがある。 |
フローレンティナ florentina |
フローレンティナはフローレンス産の意味。 sylvestris種の栽培品をこの学名で呼ぶことがある。 |
ベイケリ bakeri |
イギリスの植物学者ベイカー(J.G.Baker、1834-1920)に因む。 クレタ島の原野または岩石の間などに見られる小型種。 |
ホイッタリー whittallii |
キュー植物園のために植物を採集したイギリス人のホイッタル(E.Whittall、1815-1917)に因む。 原産地はトルコ西部。 |
ポリクロマ polychroma |
原産地はトランスコーカサス東部、イラン北部、アフガニスタン北西部に分布。 |
マクシモヴィッチ maximowiczii |
ロシアの植物学者マクシモヴィッチ(K.J.Maximowicz、1827-1891)に因む。 類似種で開花の遅いlinifoliaより、緋赤色の花被の基部の斑紋が小さい。 |
モンタナ montana |
原産地はイラン北部と中央アジアに原生する。小型の華やかな種。 |
ユリア julia |
トランスコーカサス原産 |
ラティフォーリア latifolia |
ラティフォーリアは広葉の意味。 原産地は本州中部。原野に生ずる多年草。しばしばアマナと混在し、よく似ているが、葉はアナマよりも幅広く、雄蕊は雌蕊より短く、かつ全部等長で長短の区別が無い。花期は3月。 |
ラナタ lanata |
原産地はアフガニスタン東部、イラン東北部、カシミールなど中央アジア。 大型種。 |
リニフォリア linifolia |
リニフォリアは「アマナの葉のような」という意味。 原産地は中央アジア、イラン北部、アフガニスタン。 球根は球形で小さく垂下球ができやすい。bataliniiと形態は似ているが花色が違う。 バタリニ(Batalinii)グループ。かつては別種として登録されていた。 ブライトジェム、ブロンズチャーム、イエロージュエルがある。 |
【参考文献】
ENCYCLOPEDIA OF HORTICULTURE⑥T-Z、原色園芸植物図鑑Ⅳ保育社、原色園芸植物大圖鑑 北隆館、A-Z園芸植物百科事典
誠文社、園芸植物図譜 平凡社、園芸植物大事典1 小学館、新花と植物百科 英国王立園芸協会、フローラL-Z産調出版、日本花名鑑①、花卉品種名鑑 農文協